周術期等口腔機能管理
入院が決まったら、手術が終わったら 歯医者さんへ行こう!!
■ 周術期って?
治療に関わる術前、術中(入院中)、術後を含めた一連の期間のことです。
入院が決まったら、手術が終わったら 歯医者さんへ行こう!!
治療に関わる術前、術中(入院中)、術後を含めた一連の期間のことです。
お口の中にはむし歯や歯周病の原因となる細菌が600種類以上いて、歯垢(プラーク)1mg中に1億もの細菌がいます。当然、お口のケアが悪ければそれらの細菌は増加します。
それらの細菌により、手術や放射線治療、化学療法などによる体力や免疫力の低下で感染症を引き起こしたり、手術時の気管挿管などでお口の中の細菌が肺にが侵入し肺炎を起こしたりします。また、術後も同じく誤嚥性肺炎の危険性もあります。このようなお口の中の細菌による合併症を予防するためにも周術期だけでなく、日頃からお口の中を清潔に保つことが大切です。
歯周病菌と全身の病気の関係性がメディアでも取り上げられています。心臓病、脳卒中、糖尿病、動脈硬化、女性では低体重児出産、高齢者の方の誤嚥性肺炎など、多くの病気のリスクが歯周病菌で高まります。日頃からのお口のケアでこれらのリスクを軽減することができます。
また、定期的に歯科医院で検診を受けている方は、当然これらのリスクも減り、入院日数や年間の医療費も減るとの報告もあります。
周術期だけでなく、日頃からお口の中を清潔に保つことが「健康長寿」の入口です。是非、年に一度はお口の健康チェックにお出かけください。
超高齢化社会を迎えた日本では、健康上の問題で制限されることなく日常生活を送ることのできる期間である「健康寿命」をいかに伸ばすかが課題となっています。課題解決の鍵として注目されているのが、加齢によって心身の活力が低下した状態を意味する「フレイル」という概念です。さらに最近では、口腔機能の軽微な衰えに着目した「オーラルフレイル」という新たな概念も構築されています。
人間は誰でも加齢とともに心身の機能が低下し、健康で自立した生活が送れる状態から介護が必要な状態へと「老いの坂道」をゆっくり下っていきます。この坂道の中間には、筋力や心身の活力が低下する「フレイル(frailty=虚弱)」と呼ばれる段階があり、要介護となる最たる要因となっています。しかし、適切な介入を継続すれば健康な状態に戻すこともできるため、早めに気づいて予防することが重要です。
フレイルは多面的な特徴を持ち、身体的な衰えのほか、心や社会性の衰えも含まれます。特に、身体的フレイルのひとつである筋肉の衰え(サルコペニア)は、フレイルを加速させる最大の要因と考えられています。
フレイルを加速させるサルコペニアは、四肢だけでなく口腔や喉にも起こります。舌や頬、口周りなどの筋肉量や筋力が低下すると、食事を食べこぼす、お茶や汁物でむせる、硬いものが食べづらい、滑舌が悪くなるといった口周りのトラブルが現れます。そして、口腔機能の低下、摂食嚥下障害や咀嚼障害といった食べる機能の障害へと進んでいく、この一連の現象および過程のすべてが「オーラルフレイル」です。
ささいな口のトラブルは、フレイルの前段階であるプレ・フレイル期に現れます。口腔機能が低下すると食事が偏り、栄養バランスが乱れて低栄養状態から要介護状態に陥るリスクが高まります。健やかで自立した暮らしを長く保つには、ささいな口のトラブルを見逃さず、早期の段階で口腔機能の回復と維持に努める必要があるのです。
フレイル、オーラルフレイルの原因となるサルコペニアを予防するには、日常生活や運動を行うためのエネルギーと筋肉をつくるたんぱく質を十分摂取することが重要です。
「しっかりかんでしっかり食べる」ことは生きる原点です。国民の皆さん一人ひとりがこの原点に立ち返り、ささいな口の衰えが全身に大きな影響を及ぼすことを自分ごととして理解し、普段の生活の中に継続性のある対策を取り入れていただきたいと思います。
超世界中で急激に増加している糖尿病。2011年時点で世界の人口約70億人中、糖尿病と推定される人は約3億6600万人と言われています(国際糖尿病連合調べ)。近年、歯周病と糖尿病とがお互いに関係することが明らかになってきました。
糖尿病とは、食べたものから分解された糖分が、体内に吸収されにくくなり、血液中に糖分が溜まってしまう状態(高血糖)が続く病気です。このような高血糖状態が続くと、心臓病、腎臓病、脳卒中、失明などの合併症を引き起こしてしまいます。実は、歯周病が糖尿病と深く関連する病気であるということがわかり、歯周病は「糖尿病の合併症」と言われるようになりました。
また、合併症を引き起こすと生活の質(QOL)が衰え、大変つらい生活を過ごす結果にもつながりかねませんので、診断結果や症状のサインを見逃さないようにしてください。
糖尿病で高血糖状態が続くと、体の中の防御反応が低下して、感染症にかかりやすくなるといわれています。細菌感染を原因とする歯周病についても同様であり、糖尿病の人は健康な人に比べて歯周病にかかるリスクが高まると言われています。
また、高血糖状態でハグキの血管が傷んでしまうことで、歯周病が進行しやすくなります。
歯周病により、ハグキの中で作り出される炎症性物質は、血液を介して血糖をコントロールするホルモンであるインスリンの働きを妨げ、糖尿病を悪化させる可能性があります。特に2型糖尿病の方に関しては、歯周病の歯周治療を行うことで、インスリン抵抗性が改善することなどが報告されており、糖尿病の血清コントロールに歯周治療が重要であることが、認識されてきています。